その眼差しの彼方まで

アイドルと音楽と日記

アイドルの精髄――SixTONES「慣声の法則 in DOME」感想文

2023年4月16日(日)に行われたSixTONES「慣声の法則 in DOME」京セラドーム大阪公演の感想文です。セットリストや演出などのネタバレはほぼ含まれません。

 

ブログを開設した当初から、アイドルを好きでいること、そしてアイドルというコンテンツにお金や時間を費やして自分にとって特別な位置におくことの営為について書いてきた。歪んだ社会において、特に歪んだ営みのひとつだろう。わたしも正気なときはそう思っている。でも、それだけじゃないと正気で信じているから今日もアイドルを好きでいる。

 

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10日くらい前に、「ABARERO」発売と初の単独ドーム公演を控えて書いたこのエントリは特にそうで、このクソみたいな社会の中でもアイドルとファン、というかアイドルとわたしの関係を、わたしの感情を誰にも奪われたくないという意思表示だ。同時に、消費者として、社会の構成員としてアイドル業界が孕んでいる問題について考えるのは必要なことだと思っている。楽しいことだけ考えていたくて逃げたくなる日もあって、本当に疲れているときはそれだけのときもある。それでも自分ができる限り長く楽しみたいがためにできることがあるし、それらは両立できると信じている。

 

話が逸れたけれど、先週末4月16日に京セラドーム大阪で行われたSixTONES初の単独ドーム公演「慣声の法則 in DOME」で、アイドル、アイドルとファンの関係、アイドルのライブとして、ひとつの極致を見た。極致であり、通過点だった。その話をしたい。

本当に楽しかったのだ。初のドームだから?セトリが良かったから?声がいいから?パフォーマンスが素敵だから?ビジュアルがカッコイイから?演出が良かったから?全部そうだけど本質ではない。

 

このブログで散々紹介してきた通り、田中樹の言うアイドルの定義、譲れない一線は「歌って踊って時間を共有すること」である。自分が思うアイドルの定義について、こんなにしつこく何度もいろんなところで聞かれているのは田中樹くらいだろう。でも、聞きたくなるのだろう。分かる。彼がアイドルという仕事にプライドを持ち、拘っていることが分かるから。だからこそ、彼がどんな言葉でその仕事を定義するのかを知りたくなる。

端的に言うならば、このアイドルの定義が見事に体現されたのが「慣声の法則 in DOME」だった。今までだってそうだった。年始の横アリで行われたアリーナ公演の方も楽しかったし、それより前だってそうだった。でも、通過点と言ってもどうしても特別な場となる初の単独ドーム公演で、このアイドルの精髄をやり切るのは、シンプルなようでいて実は胆力のいることだと思う。

 

公演が終わって、最初に思ったのは「魂の形が合ってる」だった。あまりにもめちゃくちゃな表現だけど、そうとしか言えなかった。アイドルのファンとして、何かは分からないけど何かに辿り着いてしまった。

わたしの生活はアイドルオタクをやるために存るわけではないし、このライブもまた、わたしが今まで費やしてきたお金や時間、精神のために在ったわけではない。ただファンとして肯定されていた。いや、肯定とかそんな堅苦しい話じゃなくて、ただそこにいて、声を出して、ペンライトを高く振って、音楽にノって、彼らの声に心を澄ませているわたしは、たぶん見てしまったのだ。いつか中居くんが言っていた「アイドルとファンそれぞれのキラキラがぶつかって生まれる明かり」に、出会ってしまった。

他人から崇拝だと言われようと信仰だと言われようとどうでもいい。愛でも恋でもなんでもいい。好きにしたらいい。あ、でも推し活とは言われたくないかもしれない。まだこの世にはわたしの感情を表すだけの言葉がないと思う。現状、中居くんの言葉が一番近い。魂の形が合ってる。誰にもわたしを測れない。いつか推し活ブームが過ぎ去り、世間に責任を擦られアイドル産業が灰になったあとも、わたしのこの想いを奪われることはない。

 

そして、SixTONESが本当にすごいのは、決して「客を楽しませる」ことだけに焦点が当たらないことだと思う。もちろんプロとしてそういう意識はあるだろう。でもわたしは彼ら自身が楽しんでいる姿をみて思わず笑ってしまうことの方が多い。

SixTONESは文脈のアイドルだ。でも決してそれを湿っぽくは語らず、今一緒にいられるのが嬉しい!と全身から伝わってくるのが最大の魅力で、そしてファンのことも仲間だよ!と言ってくれるのが優しさだ。けれど、京セラ公演の間に放送されたANNで慎太郎が語ったように、SixTONESにはメンバーにしか分からないものがあって、当たり前だけどどうやったって同じ立場にはなれない。それもまた魅力なのだ。

本当に楽しそうだった。観測者の分際で楽しそうとかそうじゃないとか勝手にジャッジするのは良くないのだが…(急に冷静)。SixTONESがこの6人でいること、最高にカッコつけられる場所であること、この6人でなら最強になれること、彼らが心底そう思っていることが肌で分かったし、その時空を共有する相手として、わたしは最高だった。酒でも入っているのかと思うレベルで恥ずかしい文章をシラフで書けるほどには最高の場だった。

 

たぶんこのわたしの気持ちは多くの人には伝わらないだろうと思う。わたしの言語化が下手なのもあるし、このドームを観れていない人もたくさんいるのを知っているし、アイドルを好きでいることの熱量は人によって、時間によって違う。ただわたしがこう思って、丸3日経っても酔いから冷めないことを書いておきたかった。いつかわたしの生活からSixTONESがいなくなったとしても、この想いは決してなくならないし、この出会いは幸運だったと胸を張って言えるだろう。

 

最後に、田中樹さん、入所15周年おめでとうございます。わたしがあなたの入所日を数えるのは5度目になりました。わたしって本当にあなたのファンに向いているし、あなたのファンでいることが心底幸せだ。そう思える今日があることが、わたしが一番体感できるあなたの仕事の成果だと思う。あなたが想いを込めた音楽を受け取れることが、時間を共有できることが、嬉しくて仕方ない。

 

2023.4.20