SixTONESの音楽性の形成を考えるシリーズ(仮)第2弾として、6月14日発売のニューシングル「こっから」を手掛けた佐伯youthKさんとSixTONESのこれまでの歩みについてまとめてみたよ。
この記事は後編です。前編から読もう!
情報をまとめつつ書いてたら文字数がエグくなったので、適宜飛ばしつつどうぞ。
一部雑誌のテキストやツイートの引用がありますが、出典は明記しているので興味を持った場合には是非原文を読んでください。当記事の引用箇所からの孫引きはやめてね。
また引用箇所以外についても、これまでの軌跡をまとめるために「当時こういうことを言っていた」という記憶やツイートを元に文章を構成しています。投稿現在めちゃくちゃ忙しくてソースを改めて確認できなかったため、私の生活が落ち着き次第出典を補足します。発売前に投稿することを第1目標としているため、こういう形をとらせてください。そういったことを踏まえ、事実と異なる部分がありましたらこちらまでご連絡をお願いします。
佐伯youthKという作家のこと
佐伯youthKとは
・作曲家、作詞家、シンガーソングライター、声優
・関ジャニ∞「YOU CAN SEE」で作家デビュー
・シンガーソングライターとして、弱虫ペダルやDr.STONE、遊☆戯☆王SEVENSなどの主題歌・OP・EDなどを担当
幼少の頃から、母のオーディオから流れるメロウな音楽に触れながら育ち、中学高校の部活でトロンボーン・コントラバスを経験。
その後ダンスを始め、Soul, Funk, Hiphop, R&B などのサウンド感に興味を持ち始める。
提供・自身の活動共に一貫して絶妙なメロディセンス・独特かつ耳馴染みの良いリズム&リリックアプローチを持ち味としている。
SixTONES以外のジャニーズ提供曲
・嵐「この手のひらに」 - 共作詞・共作曲
・関ジャニ∞「YOU CAN SEE」 - 共作詞・作曲・編曲
・Sexy Zone「Show must go on」 - 共作曲
・Snow Man「ADDICTED TO LOVE」 - 共作詞・共作曲
・Snow Man「Slow...」 - 作詞
先述した「わたし」リリースと前後して田中樹が登場したFREECELLでは、インタビュアーがこんなことを話している。
-例えばSAEKI youthKさんはこれまでもたくさんの楽曲をジャニーズのグループに提供して来ましたけど、SixTONESに出会ってから趣味性を全開にするようになって、そこから「わたし」や「オンガク」のようなオクターブユニゾンの名曲が生まれたというか。
FREECELL vol.48
ここで語られている佐伯さんの趣味性とは「オクターブユニゾン」のバラードのことだと思われます。なるほど?
インターネットの力を借りて、佐伯さんの過去のインタビュー記事を漁る。
元々HIPHOPが好きだったのもあって。中でも一番好きなのはRHYMESTERです。やっぱりブラックミュージックでも、オーガニック寄りのサウンドを作るミュージシャンが洋邦問わず好きだったんですよね。
2017.5.19
西野カナや東京女子流の楽曲提供でも話題 佐伯ユウスケが目指す“オーセンティックな音楽” - Real Sound|リアルサウンド
後で紹介する記事でも述べられていますが、最もリスペクトしているのはRHYMESTERだと公言しており、入野自由への提供楽曲ではMummy-Dと共作している。
「君って」以降はバラードでの発注が増えて、佐伯youthK=バラード作家、というイメージが一時期ついたのは事実
2017.5.19
西野カナや東京女子流の楽曲提供でも話題 佐伯ユウスケが目指す“オーセンティックな音楽” - Real Sound|リアルサウンド
ちなみにですが、「君って」は西野カナの2010年の曲で、彼女のシングルの中で最高の売上を記録しているらしい。佐伯さんは作曲を手掛けています。たぶん当時ヒットしてたんだろうけど流行りの音楽に弱すぎて全然記憶がねえ~。聴いてみるとなるほど綺麗な曲で、僕僕やオンガクあたりが想起される。けどこの項で紹介しているインタビュー記事は割と前のものだし、佐伯さんの趣味性とは何なのか、そしてFREECELLでインタビュアーが指したことは何なのかは分からんですね。ということで何らかの機会に佐伯さん本人に取材して欲しいんですが…。
20代の頃ダンスをかじっていたのですが、キメやブレイクがあると音ハメしやすいですし、イベントでかかってたりして予想できない展開が来ると、ウォー!ってめっちゃアガるんですよね。踊れるビートな曲には、そういうマインドがいまだにあるのかもしれません!
2021.3.2
佐伯さんのダンス経験はSixTONES提供楽曲へも確実に活きていそうです。それこそ「こっから」が最たる例かも。
うーん、よく分からない!ので、Wikipediaを参考にサブスクで聴ける範囲の佐伯さん自身の曲、佐伯さんが手掛けた曲(編曲のみを除く)を全部聴いてみました!ジャニーズもSixTONESはもちろん嵐とSexy Zone(佐藤勝利)のは音源持ってるし、スノの2曲はYouTubeに上がってたし、「YOU CAN SEE」以外は確認できた*1。暇なのか忙しいのかわかんねえな。流石にフルで聴くのは時間的に厳しかったので、曲の雰囲気が分かる程度にはサラッと一通り。その印象だけでいえば、僕僕のような綺麗な曲やR&Bやファンクが多いなかで、「こっから」的なイントロからゴリッゴリのHIPHOPだな~!て感じのはあんまりなかった。と思う、たぶん…。音楽知識がなさすぎて自信がない。ただラップがある曲は結構あって、そうじゃなくても韻にこだわりありそうなものも沢山ありました。
ちょっと脇道に逸れるんですが、弱ペダOPシングル「ダンシング」に収録されている「カップリング」という曲がなんか佐伯さんの人柄がわかるような気がしたので是非聴いてみてほしいです。この遊び心と良い意味でのひねくれ具合がなんとも…。
はじまりの曲である「NEW WORLD」も、割と王道めなアイドルポップの中にラップパートがある曲です。カップリングを選ぶにあたってSixTONESのアンテナに引っ掛かったのは、佐伯さんがHIPHOPやラップに造詣があるからなのかもしれないですね。
ずっとRHYMESTERが好きで、一番リスペクトしてるのですが、最近Mummy-Dさんと一緒に曲を書かせていただく機会に恵まれて。(中略)なのでHIP-HOPのトラックメイキングにチャレンジしてみたいです。自分のルーツになっているサウンドを、HIP-HOPとかシティポップ、渋谷系のような音楽に乗せるという事にトライしてみたいです。ど真ん中ではない事を。
2017.3.2
西野カナなどのヒット曲を産み出す男『エンタメの今に切り込む新企画【ザ・プロデューサーズ】第十六回・佐伯ユウスケ氏』 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス
うーん。何らかの機会に絶対に佐伯さんにインタビューしてほしい。音楽誌でも、2021年5月のスペシャル月間的な何かでも…。SixTONESの音楽を語る上で不可欠な存在だから。
何にせよ、前述した通り「こっから」はHIPHOPの根っこを意識して作っているだろうし、更に後述しますがリリックにもRHYMESTERのサンプリングらしき箇所もあり、MV公開時のツイートにあった「佐伯エキス」はおそらくこのあたりことを指しているのではないかと思われます。
佐伯youthKとCreepy Nuts
しばらく佐伯ユウスケさん毎日聴いてる
— DJ 松永(Creepy Nuts) (@djmatsunaga) 2014年12月31日
【コメント紹介⑱佐伯ユウスケさん】
— Creepy Nuts (@Creepy_Nuts_) 2016年3月3日
音楽家として完全に天才。そしてその気さくで物腰の柔らかい人柄もズル過ぎますがな。。。良いなあ。。。笑 DJ松永
全文⬇︎https://t.co/yyTHjkU2hN pic.twitter.com/PLUmi9KHPI
余談ですが。こんな過去ツイートを掘り出して双方に申し訳ない。このコメントというのはEP「たりないふたり」リリースに合わせて各界の著名人から寄せられた中のひとつみたいです。現在はリンクが切れており、全文が読めない…。何にせよRHYMESTERを敬愛するCreepy Nuts(DJ松永)と佐伯さんの間にはかなり前から親交があるということですね。なるほどなるほど。
「こっから」のこと
こっからは歌詞並べて歌詞の内容や歌割りのℒℴνℯポイントを書き連ねていくターンです。
Hey, boy 平凡に Born in the ニッポン 産声オギャー行く先は荒野
ニッポンがこの表記なの、ニッポン放送のことが脳裏にあると思うんですよね。
SixTONESがニッポン放送のアンテナに引っかかったおかげで起きたこと抜粋
- ANN初回(2019年8月1日 25:00〜放送)直後に枠を持っていた井口理にツイート数をビックリされる
- 2020年4月レギュラー放送開始時にDJ松永からビタースイートサンバRemixが提供される
- 2020年7月田中樹ラップご当地番宣
- SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル2021年4月24日放送回でCreepy Nutsがゲスト登場
- 2021年7月14日放送FNS歌謡祭でCreepy Nuts×田中樹で「かつて天才だった俺たちへ」披露
- 2021年8月11日常田大希プロデュース「マスカラ」リリース
- SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル2022年5月21日放送回でYOSHIKIがゲスト登場→東京ドームの約束を取りつける
- Creepy Nutsのオールナイトニッポン2022年4月18日放送回に田中樹がゲスト登場(DJ松永不在)
- 2023年4月慣声の法則 in DOME 東京ドーム公演一日目にYOSHIKI、三日目に常田大希がゲスト登場
後枠のオードリーとはSPWでやり取りしたり、ちょこちょこ名前出したりしてくれるおかげで深夜ラジオリスナーも聴くきっかけになってると思ってるし、「だが、情熱はある」についてもたくさん話せて嬉しい場になっている。
ANNの中でも離れ小島みたいなSixTONESANNも、元気よくANNヅラしています!最初にANNって名前つけてホント大正解。その詳細についてはこの生配信で語られている(時間指定)。
ノーマル以下が如何にして 地下深く眠る鉱脈掘れますか?
フロウが良い!!京本さんの母音の発音、声の伸びの良さを存分に活かしている。この次のジェシーとの対比が美しい。
知るか!伸るか反るかしかねぇこの世の中 確かな価値観など無価値か
またまた歌割り厨もニッコリの完璧な当て方です。ジェシーの子音の発音の歯切れの良さとkaの韻はめちゃくちゃ相性が良い!最高!
カッとなったってこの葛藤で生まれた Take は Cut できんYo
ジェシーの「無価値か」に被せながら入る髙地パート本当に難しいと思うし(「フィギュア」の途切れ途切れタクシー/シーサイドだらだら走ってる と似た譜割り)歌い方も彼が元来持ち合わせていた癖を自分の制御下に置いて使いこなせるようになったことが分かる箇所で、聴く度に感動する。生放送でもめちゃくちゃ安定してて、昨年9月放送の風磨ゲスト回ANNで語られた「入所当時みんながダンスの練習をしている中でひとり手拍子を叩いていた」というエピソードを思い返すと胸がアツい。
I can't be someone else, Oh I know, I know…
ほくじぇパート*2ですね。
これだけじゃやれねぇってわかってる
でもこれしかねぇからこれにかかってる
間違ってる未来でも俺には光ってる
慎太郎が2023年5月31日放送「山里亮太の不毛な議論」にゲスト出演した際には山里さんを意識して歌っていると語ったパート。ここの熱の込め方は芝居が上手い人、表現力が高い人ならではで、サビ前の重要なパートを彼に任せるあたり(タイアップというだけではなく)まじ分かってる!
Let it fire!
燃やすこの闘志 その鉄格子
ぶち壊しどうしようもないままが
自分なんだ こっから始まんだ
いつかの童心もって努力し
夢と相思相愛になれるはずなんだ
こっから、こっから始まんだ
「夢と相思相愛になれるはずなんだ」という、自信もあって強気に語ってはいるのにそこに少しの揺らぎが感じられる歌詞がとてもSixTONESらしい。
サンプルっぽいのがRHYMESTER「リスペクト featuring RAPPAGARIYA」です。
次の次元行けるように
豪傑同士結合し曲げる鉄格子
鋼鉄の石をも溶かす情熱と高い意識
前編で紹介したツイートでも佐伯さんも「リスペクト」と書いているし…。
1,2,3,4 順番通り
行ってないだけで予定通り
ローリンローリン 転がってけ
よりどりみどりの一生
1,2,3,4 順番通り
行ってないだけで予定通り
ローリンローリン 転がってけ Yo
こっから始まんだ
ここは皆さんお気付きの通り、「NEW WORLD」のlike real stonesを経由してのローリン(Rollin')だろう。佐伯×SixTONESはじまりの曲。
よりどりみどりの一生って本当に良いリリックだな。
おそらく今は手に入れづらいであろうRollin'がちょっとだけ聴ける動画(冒頭部分)。
こっから?どっから?わからん だって燃料自体はすっからかん
さっきのヴァースと同じようにジェシーの子音の発音の小気味よさを存分に生かしたサイコーパート!母音の印象が強いフロウがめちゃくちゃ気持ちよい。
こらアカンわ 楽観し簡単にゃ済まぬまさに難関
これは曲全体に言える話ですが、歌い手が変わった上で違和感なく韻を聴かせるのってかなり高度な技術だと思うんですよね。田中樹の仕事人っぷり、ラップ技術の高さに痺れます。
一人になりたくても人だらけ さらけ出すにも一苦労なわけ
聞かれたくない サイレンピーポー でもどこ行ったって“人人人”
聴いての通り「人人人」のセルフサンプリング。SixTONESとしても佐伯さんとしてもセルフサンプリングなのすごい。「人人人」が「こっから」のきっかけになった件、詳しく聞かせてくれよ〜。
ここの北斗→京本の割り方もグッとくるけど、オタクの妄言に近付いてくるのでこの記事で書くのはやめておきます。今だからこそ歌えるリリック。
黄色信号でずっと進行
辛抱した先は歩こうぜレッドカーペット
タリラリラリラッタ♪ Come on!
よりどりミドリってさっき言ったろ?
明日ありと思う心の仇桜
生きてることが青天の霹靂
しかし悔しさで黒く燃える腹ん中
燃やせ燃やせ燃やせ
問題のメンカラ歌詞パート。
6月5日以降の我々はドラマ用サイズとMVサイズ、フルサイズを手に入れたわけですが、MVとフルはたった30秒程度しか差がなくて。つまりは基本的にフルを無料では公開しないSixTONES(ジャニーズ)だからこそ生まれ得たパートだと思うんですよね。
思い起こされるのはやっぱり「Amazing!!!!!!」だな~。
「こっから」フルサイズを踏まえて改めて「Amazing!!!!!!」を聴くと、ある種まるごとサンプリングしているのでは?という気もしてくる。「こっから始まんだ」って「俺らまだ原石さ」じゃん。
しかもSixTONES表題の間奏あるあるではあるが、ぶっちぎりで難しそうなフロウなんですよね。これを初披露の場で仕上げてきたのがカッコよすぎる。
信号の意味は青は「進むことができる」、赤が「進んではいけない」、黄が「止まれ」。止まれと言われても進むのが髙地優吾なんだよな…。
フック前の「これしかねぇからこれにかかってる」と「よりどりみどりの一生」はパッと見は相反しているような印象を受けますが、これしかないことを理解しつつも「よりどりみどりの一生」だと高らかに歌うことは同時に成立する。これは、彼らの地に足つけつつも「イキがって、強がって、カッコつけてく」*3姿勢のことだと思うんですよね。それを更に補強する「よりどりミドリってさっき言ったろ?」に痺れるぜ。
仇桜と青天の霹靂については解禁時に散々Twitterでも言われていたから触れるの気まずいんですが、この記事の目的のひとつは「こっから」に関係する情報を集約することなので一応書きます。
明日ありと 思う心の あだ桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは
親鸞の作で無常を詠んだ歌です。要は今が一番大切ってことですね。親鸞のサンプリング、カッケ〜すぎる。
青天の霹靂は予想外の出来事が突然起きることですが、「生きてることが青天の霹靂」はいろんな読み方ができる歌詞だなと思う。
田中さん自身、過去何度も語っているように今を大事に生きているタイプの人だということがひとつ。仇桜と近い意味を読むことができる。
Live like you only got one day, Dream like you will live forever
SixTONES - JAPONICA STYLE [English Ver.] (Lyric Video) - YouTube
「JAPONICA STYLE」のEnglish Ver.における2Aの田中も思い起こさせる。仇桜も夢恋桜とかかってんのかな~。というかさっきは「こっから」って「Amazing!!!!!!」じゃん!!つったけど「JAPONICA STYLE」でもあるな~~~~!?描ける夢はきっと叶うのさ…。
そして「青天の霹靂」は故事成語なので、つまりは由来となった出来事がある。
青天の霹靂の由来は、中国南宋の詩人 陸游(りくゆう)が『九月四日鶏未鳴起作』の中で、「青天、霹靂を飛ばす」と表現したことによる。
「青天、霹靂を飛ばす」は、病床に伏していた陸游が突然起き上がり、筆を走らせた勢いをかみなりにたとえたもので、本来、「青天の霹靂」は筆の勢いを表す言葉であった。
筆の勢いを表す言葉と言われて、田中樹のことを思い浮かべながらイメージするのは、彼が言葉を巧みに操る人だということでしょう。筆の勢いというか口の勢い?滑舌?頭の回転?全部そうだからどれでもいいが、彼の持つ哀愁と靱やかさと俊敏さが真っ青な空を貫く景色を思い浮かべると、私に絵のセンスがないことを悔やむね。晴れた空をも割れるほどのインパクトと、その景色が持つアンバランスさが良く似合う。
ヤンキーだったら特攻服に「生きてることが青天の霹靂」って書いてたな。次のドームそれで行こうかな(?)
けど、仇桜だの青天の霹靂だのオシャレな言い回しをした直後にくるのは「しかし悔しさで黒く燃える腹ん中」なんですよね。美しく粋がっている彼らの腹の底の見えなさと、その開示が両立している。お芝居ツートップが語る貪欲さは強烈な印象で迫ってくるね。
「辛抱した先は歩こうぜレッドカーペット」って、当然ジェシーにすごくピッタリなリリックだけど、佐伯さんからSixTONESへのメッセージなのかなとも思ってしまうわよ。レッドカーペットを歩くSixTONESってマジでかっこいいだろうな…。
6人それぞれに合わせて歌詞書いてこんなバラバラになることある?それなのに、全員全然違うこと言ってるのに、全体で聴くと根っこは繋がりあっていることは分かる。これがまさしくSixTONESで。
ところでタリラリラリラッタ♪って何だ?何らかのサンプリングなのか?とずっと考えていますが全然わからない。ただ楽しく歌ってるだけかも。SixTONESだからね。
「俺、悪くない。なんも間違ってない」
自分じゃない何かのせいにしたい
天才じゃないのダッセわかんなさい
これ フィクションじゃない
よく見なさい 天賦の才などない
でも やめられないみたい
あたしゃ阿呆か馬鹿みたい
このパートの直前にある樹がなんか言っている歌詞にはなっていない箇所ですが、めちゃくちゃ英語できる友達に無理やり聴かせた結果「Take it to the bridge」じゃないかという回答を得ました。マジありがとう(届かない)。
日本語圏でいうブリッジは割と解釈分かれそうな気がするんですが、この曲がHIPHOPであることを踏まえるとヴァース(サビではない部分)、フック(サビ)に対するブリッジ(大サビ/もうひとつのサビまたはつなぎ部分)なんだろうな。つまりブリッジ行くぜ!というシンプルな掛け声だった。もしかしてみんな知ってた?
Take it to the bridgeは1980年代の野球スラングで、ホームランを打つという意味らしい。洋楽とかでたまに登場する…らしい?が、そういう文脈も含めて使われている言葉なのかな。「こっから」ではホームランかっとばせ!とブリッジ行くぜ!で二重にかかっていそう。そこを田中樹に任せるんですね。
話を戻して、このブリッジはCreepy Nuts「たりないふたり」がサンプルでしょう。1:30ごろからの「こちらたりないふたり」以降の部分ですね。リリック(ライム)だけでなくフロウの浮き沈みに注目してほしいところ。内容的には「板の上の魔物」「阿婆擦れ」あたりが近い気がします。
曲全体も恐ろしいレベルで歌割りが細かいけど、こんな縦揃えまくりのところ普通はユニゾンで歌わないだろう。表題でこれをやれるほどの自信があることがすごいし、実際生放送3回でバチバチにキメてきてるのが素晴らしすぎる。
見てみたいこっから燃える未来メラメラ まだまだ 自分で決めつけんな限界
探せお前の正解 本当の自分なんて居やしねぇ Yo!
めちゃくちゃ歌割り細かくてもう変態だよね。歌割りを誰が決めているのかは不明ですが、歌い手に対する信頼がないと成り立たない。
通らないのかオレのこの声は……
実らないのかオレのこの恋は?
そうか オレは天才じゃないんだ
逆に オレにゃ限界は無いんだ
さっきのところと合わせて。直接的なサンプリングってほどではないかもしれないけど、この曲自体「持たざる者が持てるものに勝つにはK.U.F.U.だ!」て内容なので(雑語り)ドラマの内容とも重なるかなと思った。まあどちらにしろ佐伯さんは間違いなく聴いてるから(乱暴)。あと3年前のTBSラジオのイベントではCreepy Nutsと共にコラボ披露してるんですよね。何にせよ雑語りすぎなので聴いたことない人は是非聴いてみてください。
高くなきゃダメ 低くてはダメ
って思い込んでることこそがダメ
好きこそ物の上手なれで次こそ終える根比べ
散々言われてると思うけど、きょもほく当て書きリリックで明らかに「ってあなた」のこと考えているだろうな…の部分。SixTONESの音楽の屋台骨「高音の京本×低音の松村」ですね*4。2人のクリアな声がよく響いて気持ちいいポイント。
ここまで見てきて、SixTONESは歌割りは最初から決まっているという話を踏まえると、(他の曲がどうかは別ですが)少なくともこの曲については佐伯さんが指定しているのではないかと思う。明らかに6人の声質や発音の持ち味を踏まえて歌詞を書いているような気がしてならない。そしてところどころに佐伯さんからのエールなんじゃないかと思ってしまう歌詞があるね…。
MVでは「好きこそ物の上手なれ」がきょもじゅり卍カットなのは「With The Flow」のこと考えちゃうけど、ダンス動画を見るに2人だけのことではないだろうな。
Oh しのごの言わずに動け
道なき道ほど進め
劣等も嫉妬も叱咤なる燃料
よくよく分解するとあまり韻を踏んでおらず、フロウがめちゃくちゃ重要なところをSixTONESが誇る田中樹に任せてるところがアツい!!
他でもない田中樹さんにこれ歌われるともう正座して受け取りたくなる。しのごの言わずに動きます。
「こっから」サンプリングの元ネタだと思われるもののまとめ
ビート
- B-BOYイズム/RHYMESTER
リリック/ヴァース
- Amazing!!!!!!/SixTONES
- Rollin'/SixTONES
- 人人人/SixTONES
- ってあなた/Taiga Kyomoto × Hokuto Matsumura
- たりないふたり/Creepy Nuts
- リスペクトfeaturing RAPPAGARIYA/RHYMESTER
- 明日ありと 思う心の あだ桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは/親鸞
あくまで推測ではありますが。この1ヶ月間RHYMESTERとCreepy Nutsはかなり聴いたんだけど他にもあるのかな。どうなんでしょう。
SixTONESのこと
ここまで見てきたように、デビューシングルからSixTONESと佐伯さんはアツい信頼関係を築き上げてきた。「人人人」からの流れもあると思うけれど、今回のリリースに合わせた雑誌取材では佐伯さんの名前が出てくることも多かった。これはYOSHIKIさんや常田さんのようなビッグネーム以外の提供者としては珍しいことです。
そしてこっからは、2019年春からとはいえ、曲がりなりにもデビュー前から追っているオタクの端くれとして書いておきたいことを。
デビュー期の私は、こんな縦揃えまくりの激ヤバラップを表題に勝負をかけてくる未来があるとは思っていなかった。「Imitation Rain」のプロモーションをしていく中で、誰に言われたんだかSnow Manはダンス、SixTONESは歌唱力みたいな構図が作られた。確かに京ジェは当時からすごかったけど、グループとして歌唱力を売り文句にする程か?と言われると素直に首肯できなかったと思う。少なくとも私はそうだった。当時の構図はイミレの歌割りにもよく現れている。イミレを初めて聴いたときは「割り切って京ジェをツインボーカルとしてメインに据えでやっていくのかな?」と思っていたが、SixTONESの出した答えはそうではなかった。
イミレにおいてソロパートがなかった北斗、髙地、慎太郎の3人は天性の声質を使いこなせるようになった。元々あった表現力に歌唱技術という裏打ちがなされた。この3年半の積み重ねが、「こっから」という曲に現れている。北斗の低音担当化、髙地の夏の夜の夢、慎太郎のSUPER BEAVERとの出会いなど、他にもいろんなことがあって今日に至るわけだが、正直ここまでになるとは考えてもなかったな、とこの3年半の轍を見て思う。単に私の想像力が不足していただけなんだけど。そしてもちろん他の3人だって進化しているし。SixTONESのこと、ナメてたのかもな。
6人で歌うことに意味があって、より質の高い音楽を届けるということが彼らの辿り着いた答えだった。そのために、曲を出すたび歌うたび研鑽を積んできたことが何より輝いている。これまでの積み重ねの全てが「天賦の才などない」という詞に説得力を持たせる。「アイドル」であることを逆手に取り、あらゆるジャンルを股にかけ貪欲に音楽をやってきたこと、そしてドラマに舞台にバラエティに、ジャンルレスなアイドル活動の結果にこの曲がある。アイドルオタクとしてこんなに嬉しいことはない。
「こっから」は最高のアイドルソングである。SixTONESがアイドルとして働いて得たもの、人との出会いで得たものが詰まった、彼らだけが辿り着ける境地。この曲を聴いていると、アイドルとは表現者であり、彼らの最大の武器は表現力なのだと実感する。
どんなにアイドルらしくないと言われたって、この景色に辿り着けたのは彼らがアイドルだからである。アイドルであることと音楽性を高めることは相反しない。むしろ、アイドルだからこの曲がある。
この記事を書くために自分のツイートやら雑誌やらを漁り、デビューしてからの3年半を振り返りながら、間違いなくこの上半期は「ABARERO」とドームでカンマを打ち、こっから更にカマしていくための季節だろうと思った。
とにかく選択肢が広がって欲しいという思いを持っていた2020年には、こんな素晴らしいMVが観れることを予想していなかった。ANNが始まった頃には、様々な縁をもたらしてくれるとは考えもしなかった。彼らが「音楽を作ってみんなに届くのが嬉しい」と言っていることも本当に嬉しくて。全部当たり前じゃなくて、彼らがこれまでやってきたことが全て今日に繋がっていることを改めて噛み締める。最速2000万回再生を、最新の表題曲で上塗りした彼らのことが大好き。
どうか、彼らが不要な傷をつくらずに、やりたいことに専念できるように、そんな明日があることを願っている。自分の生活をやりつつも、自分の欲望のために、彼らの未来を見たい。そのためにできることを、そしてやるべきことを、私はこれからもやっていこうと思います。
以上、「こっから」発売記念エントリでした。
お付き合いありがとうございました。
*1:「YOU CAN SEE」を聴くためにシブツタにでも走りに行くか!と思ったらMVのみ収録で音源は無いらしいです。レンタルにないじゃん!
*2:最初にこの記事を上げたとき、後述するきょもほくパートと間違えて感想を挿入しておりました。ごめんなさい
*3:https://natalie.mu/music/news/458584
*4:公開当初このくだりについて該当部分との齟齬がありました、ご指摘ありがとうございました!!!マジすみません